今回の記事の内容
①触覚には原始系と識別系という2つの働きがあります
②触覚の機能が上手くいかない感覚過敏と感覚鈍麻があります
③感覚の特性を理解すれば本人の困り感を理解できる
④触覚に対する感覚統合的アプローチの一例を説明します
触覚とは
鈴木です
以前感覚統合についての記事を投稿しましたが
今回はその中から表在感覚と深部感覚に属する
触覚について、発達障がいをお持ちの児童が
どのような感覚の特性を持っているのかを投稿します
触覚は全身の皮膚や粘膜がある場所に広く分布しており
身体のセンサーの役割があります その役割は
①痛み ②温度(熱い・冷たい) ③圧力(押されたとか)に分かれ
皮膚から入る情報によって受け取り方が変わります
また皮膚には原始系の働きと識別系の働きに分かれ
この2つの働きの特徴がよく分かれるのも触覚の特有性です
触覚 原始系の働き
生物が進化を振り返ると、最初に誕生した生物には目や耳などの
感覚器がなく、皮膚から伝えられる触覚のみで食べる
守る・逃げる・戦う(防衛反応)など行動の判断をしていました
原始的で本能的な行動であり、触覚から得られる情報が
生存して行く上での全ての判断材料でした
この原始系の働きは現代の我々人間の脳にも引き継がれています
(何だか壮大な話になって、遺伝子すごいなと思います)
この引き継がれた働きは新生児の頃に原始反射と呼ばれる
反射的に出現する行動に出ます
覚えやすい所だと赤ちゃんがビックリした時のモロ反射とか
口にものを近づけると何でも吸う吸てつ反射とか
(反射についてもまた調べてまとめたいと思います)
触覚 識別系の働き
![](https://junichilowsuzuki-sutudy.com/wp-content/uploads/2021/03/digitization-3614386_1920-1024x575.jpg)
続いて識別系です 原始系が生物初期の本能的な反応に対し
識別系は知的な情報処理を行う働きです 進化の過程で
発達してきたので、人間など哺乳類が持つ機能です
療育プログラム内でもよく行うのが「箱の中身なんだろなゲーム」
目に見えないものを手の触覚を頼りにものを当てるゲームです
これは識別系の機能が働くことで形や大きさ、触感など受けた
感覚を弁別したり感知することで情報を処理します
識別系の働きが成長することで段々と原始系の働きは縮小します
識別系が色々な刺激の整理を出来るようになったことで
原始系の働きを抑え込んでしますからですね
触覚の感覚統合がうまくいかないと ~感覚過敏~
![](https://junichilowsuzuki-sutudy.com/wp-content/uploads/2021/03/pexels-andrea-piacquadio-3978388-1024x683.jpg)
触覚の統合につまずいてしまうと、それが感覚防衛反応と
不器用さという状態となって現れます
この状態は問題行動と捉えられてしまうので切ない所です
定型発達ですとこの触覚の機能は統合され、識別系が
上手に原始系の働きにブレーキを掛けたりバランスよく
働くのですが、このバランスが乱れることで原始系の
働きが強く出ることで本能的な行動が優先となってしましまいます
感覚が過敏であり苦手な感覚から自分を守ろうとする行動が
生活に影響を与えることも多いです()内は関わる大人の心の声
・例えば手をつなげない(何でいう事聞けないの?)
・特定の服ばかり好んで着ている(いつもわがままばかり言って?)
・創作活動で友達と同じ作品が作れない(なんでみんなと一緒にできないの?)
これらは心理的な作用ではなく触覚の特性が与えている行動なので
本人を叱ることで行動を修正していくのは難しいです
むしろしんどさが理解されない事で自己肯定感が落ちてしまいます
つまり問題行動には必ず理由があり、本人が困っている状態と言えます
この辺を理解し、触覚の視点からその児を見てあげられると
本人も周囲も楽になるのではないかと思います
感覚の感覚統合がうまくいかないと ~感覚鈍麻~
感覚過敏とは反対に感覚が入りにくい状態の感覚鈍麻があります
感覚への反応が低下して鈍くなっている状態です
感覚の欲求を食欲に置き換えて考えると感覚鈍麻は
常におなかが減っている状態で感覚の欲求が満たされていません
その為に自分から積極的に刺激を入れる行動が自己刺激行動と言います
自分でおなかを満たそうとする行動で指しゃぶりや爪噛み
足の裏を強く床に叩きつけるなどの行動が挙げられます
感覚鈍麻の児は動きのコントロールが上手でないパターンも多く
力加減が上手く出来ないために自己刺激行動が思いもよらない
力で出力されてしまうこともあります
周囲から見ると痛そうだったり自傷的な行動の理解が出来ない
こともありますが、本人としては痛みの感覚も感じにくい為に
行動変容の学習がされづらいです 原因はやはり感覚の特性によるものです
感覚の統合を促すアプローチ
![](https://junichilowsuzuki-sutudy.com/wp-content/uploads/2021/03/jessica-delp-8UAUuP97RlY-unsplash-683x1024.jpg)
以上のような行動は感覚が上手く統合がされていないことで起きる行動です
感覚の特性が生活や人間関係の問題を引き起こす原因ともなります
感覚統合の観点からは苦手な感覚に慣れる・我慢することは目指しません
脳と身体に備わった生理的な反応であるため、上記のアプローチでは
本人に苦痛を強いることにしかなりませんので理解と支援が必要です
大切なのは原始系のスイッチが入りやすい状態を識別系がしっかりと
コントロールを出来るように働きかけていくことです
それには意識的に触覚を使い、識別系がしっかり働くことが大切です
・例えば首や脇などの過敏な場所に触れる事を伝えた上でしっかり圧を加える
・手を洗う前に手を背面から包み、手をこすり合わせてからの手洗い
ここで大切なのは感覚の入る場所に意識を向けるということです
目的の場所を目で見て注意を向ける事で苦手な触覚を和らげられます
こういった関りを積み重ねることで感覚の道路がつながり
感覚の情報の整理がされることを目指します…
長文失礼しました
では
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